細長い商業ビルの風揺れによる不安を解消!
アスペクト比の大きい細長い形状の中高層ビルは、風で揺れやすく居住者が不安感や不快感を感じることがあります。水平振動用TMDを設置することで専有面積を減少させずに居住性を確保しました。
課題
高層の建物ほど風で揺れやすくなりますが、およそ15階程度までの中高層ビルでも風揺れが問題になることがあります。市街地の狭小地に建てられるようなビルは、細長いスレンダーな形状のものが多く、超高層ビル同様に風の影響を受けやすいです。
某商業ビルは、アスペクト比が5と非常に細長い形状のため、強風による建物の揺れが懸念されました(表-1)。
なるべく専有面積を無駄にしないため、柱を太くしたり数を増やす対策ではなく、屋上に設置することで風揺れ対策ができる水平TMDを採用することしました。
表1.建物概要
対策
まず、再現期間1 年の風速を建築物荷重指針に基づき設定し、シミュレーションを行い、建築学会「居住性能評価規準」で事前評価を行いました。未対策の場合にはH-Ⅵ「わりと不安を感じる、わりと不快である」となり、これを制振対策することで改善するという判断となりました。
制振対策として10tのTMDを屋上に設置する案を検討し、シミュレーションを行ったところ、1ランクレベルが下がり「あまり不安を感じない・あまり不快でない」という評価に改善されました(図-1)。
図1.事前シミュレーション結果
風による環境振動領域において効果を発揮するためのTMDに求められる条件として、数gal程度の比較的小さな揺れでも、(摩擦に負けず)錘が適切に稼働すること、が挙げられます。そこで今回は、摩擦力の影響が小さい振り子式の水平TMDでマス質量10tのタイプを採用し、屋上階に設置しました。(表-2)(図-2)
表2.装置概要
図2.水平TMD(左:外観 右:設置状況)
結果
対策の結果、TMDによってX,Yとも、減衰比が1%だったのが、6.8%となり、大幅に収束が早くなりました(図-3)(表-3)。
専有面積を減少させずに不安・不快を感じないレベルの居住性を確保することができました。
図3.人力加振⇒加振ストップ後の自由振動測定結果(左:X方向 右:Y方向)
表3.TMDによる付加減衰と想定付加減衰
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