ロングスパンの鉄骨階段が揺れて不安!
超薄型制振装置フロアメイトで歩行時の揺れを改善!
エントランス・ホールで設けられる階段にはデザイン性が重要視される傾向があります。デザイン性の高い階段は骨組みがスリムになる場合が多く、得てして揺れやすくなるため歩行者に恐怖感を与えてしまうかもしれません。そのような時はヤクモの薄型制振装置「フロアメイト」で歩き心地の不安や、極度な揺れによる恐怖感を改善できます。
課題
意匠性の高い鉄骨階段には鋼材が用いられます。スッキリとした外観の階段をデザインすることで、より一層空間に溶け込むことができるためですが、軽快感を得られる代わりに構成部材もスリムになるため、階段の揺れが大きくなり、階段を昇降している人や立ち止まっている人が不安や恐怖感を抱くことがあります。
O大学様の校舎建替えの計画において、校舎内の吹き抜け部分に鉄骨階段が計画されていました。
建物の1Fから2F梁間約9mのスパンに支柱のない直階段を設け、圧迫感のない開放的な空間となっていました(図1)。建設会社様から、鉄骨造の直階段に制振装置を導入するにあたり相談に乗ってもらいたい、とお声がけ頂きました。
図1.階段断面イメージ
対策
建設会社様や設計事務所様との打合せの結果、今回の階段は踊場がない直階段でしたため、階段のデザインを損なわないよう構成部材の変更や支柱の追加はせず、踏面の裏側に制振装置を導入することとなりました。ヤクモの薄型制振装置「フロアメイト」は厚さ44mmと非常に薄型で可動マス部分が片持ち式の構造になっていますので、今回のように踏面の裏側に斜めに設置が出来るのが特徴です。
図2.制振装置フロアメイト外観
表1.制振装置基本仕様
フロアメイトのようなTMDタイプの制振装置は、振動を抑制したい対象の揺れやすい周波数(固有振動数)とTMDマスの固有振動数を同調させる必要があります。
そこでまず、階段の固有振動数を把握するため、人力加振(踵加振)による階段の応答加速度を実測して周波数分析(FFT分析)を行いました。結果は図3の通り、ピークの立つ6.9Hzが階段の固有振動数であると分かりました。
図3.踵加振時FFT分析結果
フロアメイトの周波数を階段の固有振動数と一致するよう調整した後、階段(踏面)の裏に設置しました(図4)。
図4.制振装置設置状況
図5.測定位置図およびフロアメイト設置位置図
結果
フロアメイト設置後、制振効果を確認するために非制振状態(TMD OFF)と制振状態(TMD ON)で二人同調歩行による効果確認測定を実施しました。二人同調歩行加振時は、歩調を一定にするためにメトロノームを使用しました。結果を図6に示します。非制振時は、1/3オクターブバンドのうち階段固有振動数に近い6.3Hz帯域にて、37.7cm/s2であった振動が、制振後には11.0cm/s2となっており、約1/3(-10dB程度)に低減しました。図6には振動の評価曲線として、居住性能評価曲線※1と歩道橋指針※2が描かれていますが、今回のケースは、対象が階段であり居住空間ではないので、後者による振動評価をしています(表2)。これより、制振する事で歩行状態の人は『少し感じる』から『少し感じるを下回る』に、立ち止まった状態の人は『明らかに感じる』から『少し感じる』となっており、フロアメイトの効果で昇降時の揺れを良好に改善出来ていることを確認しました。
※1「日本建築学会環境基準 AIJES-V0001-2004 建築物の振動に関する居住性能評価指針・同解説」
※2「これからの歩道橋-付・人にやさしい歩道橋計画設計指針」 日本鋼構造協会 編
図6.二人同調歩行による効果確認測定結果(居住性能評価曲線及び歩道橋設計指針)
表2.歩道橋設計指針による制振前・後の評価比較
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